2012年4月9日月曜日

コラム | 近藤くんのつぶやき 〜Last Love Letter版


  林さん(仮名)のご契約をお預かりしたのは、1998年(平成11年)2月でした。林さんはそのとき30歳。新婚で、奥さまのお腹には赤ちゃんがいました。いつもなら、ライフプランニングの話はご夫婦そろってさせていただくのですが、林さんの奥さまには同席していただけませんでした。


〜奥様のお話より〜

その頃の私は、生命保険会社に対して良いイメージを持っていませんでした。父が亡くなったとき、他の生命保険会社の方とのやり取りの中ですごく嫌な思いをしたんです。夫から近藤さんの話を聞かされたときも、「本当に見直しなんてする必要があるの?」という気持ちでした。


   ご主人とやり取りする中で、家族構成についてお聞きしました。奥さまのご実家には、お母さまと弟さんが一緒に暮らしている。一方、ご主人は一人っ子で、福井の実家にはご両親しか住んでいない。
   そのときのお2人のお住まいは、埼玉県浦和市、会社の借上げ社宅でした。ご主人に万一があれば、そこを出なくてはなりません。もし奥さまの弟さんが結婚されて、ご実家で暮らすことになれば、奥さまはご実家に戻りにくいだろうということ、ご主人のご両親にとっては、お腹の赤ちゃんが唯一血の繋がった家族になるということから、私はこんな質問をしました。

  「もし万一のことがあったら、奥さまはご主人の実家に住む、ということでよろしいですよね?」
私は、無意識に林さんからの「拒否」を恐れていたのです。死亡保障はそんなに高くしなくていいですよね、と言う方が、ご主人に受け入れてもらいやすいだろう、という考えにとらわれていました。反応を探るような私の質問に対して、林さんははっきりとおっしゃいました。

「いいえ。子どもを転校させたくはありません。それに妻は田舎暮らしをしたことがない。学生時代の友だちとも離れてしまう。僕の実家に住まわせることは考えていません」


うロレンツィ

いったい私は何に遠慮していたのだろう。自分で自分のことが恥ずかしくなりました。


〜奥様のお話より〜

   夫がソニー生命の保険に加入してから、約半年。9月14日に、私は元気な女の子を出産しました。その頃、夫は通院していました。少し前から胃の痛みを訴えていて、薬を飲んでも治らず、胃カメラ検査をしたのです。出産の10日後に、検査結果の連絡が入りました。胃のがんでした。腕の中には、生まれたばかりのさや(仮名)がいます。この先の看病は、誰がどうするんだろう。生活はどうなるんだろう。たくさんの不安がよぎる一方、実感はなかなかわきません。

   10月。初めての手術を受けました。術後の経過は思わしくありませんでした。彼はおどけた表情で言いました。「大丈夫だよ。前よりずっといい保険に入ってるから。」顔を見る限りでは、以前と何も変わりません。しかし検査のたびに、夫の身体の中がぼろぼろになっていくのが分かりました。

   やがて年の瀬になりました。ある日、主治医の先生に呼び出されました。「今後は、できるだけご主人といっしょにいてあげて下さい。ご主人の余命は長くないでしょう。今度の桜の花を見られないかもしれません」

   さやは、一眠りごとにどんどん大きくなっていきます。それとは反対に、夫はどんどんやせていきます。まるまる太ったさやを、すっかり細くなった腕で抱っこする夫を前に、何度も思いました。「今このまま、時間が止まっちゃえばいいのに・・・。」


最大の恐怖スピーチマンデラがあります

   出先から支社に戻る途中、携帯電話が鳴りました。「主人が亡くなりました。どうしたらいいでしょうか」林さんの奥さまからでした。「奥さま、落ち着いてください」と話す私が、誰よりも動揺していました。奥さまから、「主人が加入していたのはどんな保険ですか?」ときかれました。「終身保険が1000万円と家族収入保険が・・・」説明を始めたものの、まずは奥さまに安心していただくのが先決だと考え直し、「いっぱい入っていただいてますから大丈夫です。ご安心ください」とおこたえしました。電話を切った後も、呆然としていました。1999(平成12年)年5月9日。31歳。あまりの若さで、林さんは亡くなりました。

〜奥様のお話より〜

   お葬式の後も、やるべきことがいくらでもありました。連絡しなくてはならない相手もたくさんいましたし、連絡が入ることもたくさんありました。お金。子育て。住まい。親。なにを信じていいのか、なにを疑っていいのかも分からず、右往左往する日々でした。日ごとに大きくなるさやの世話もしなくてはなりません。

   そんな状況の中、私がすぐに連絡した相手は近藤さんでした。病気になる前、夫が保険以外のことも相談して、頼りにしていたのを知っていたからです。


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  保険金の手続きをするために、林さんのご自宅を訪ねました。玄関に、まだご主人の靴が並んでいました。部屋に上がると、さやちゃんがお布団で眠っていました。カーテンが閉まった薄暗い部屋で、私は奥さまに、ご契約時にご主人と話したライフプランニングと保障内容について、ひと通りの説明をしました。説明の後、奥さまは資料をじっと見つめていました。とても静かな時間が流れました。それが10分間だったのか、それとも30分間だったのかも、私には分かりませんでした。

   その後1週間もたたずに、保険金のお支払いが決定しました。当社の保障内容は、終身保険1000万円。逓増型の家族収入保険30年、9万円/月。他社の保障も合わせると、さやちゃんと2人、都会での生活を充分お守りできる内容でした。奥さまは、首都圏に住み続けることになりました。


〜奥様のお話より〜

   「主人が私たちのことをどう思ってくれていたのか、よくわかりました。これが主人が私たちに残してくれた思いであれば、私は主人の遺志に沿って生きていきます」近藤さんから説明を受けて、私はこうお伝えしました。あの日初めて、お金のこと、暮らしのことについて、近藤さんのお話をじっくりとお聞きしました。近藤さんは、どんな質問にも丁寧にこたえてくださいました。

   その後、私はFPの資格を取りました。さやが大きくなるまでにお金がどれだけかかるか分からず、誰よりも頼りにしていた夫はもういません。私には、お金の問題に向き合うための知識が必要でした。勉強したことで、かつて夫と近藤さんがしてくれたライフプランニングの意味や保険設計の意図も、より深く理解できるようになりました。とりわけ、毎月決まった金額が振り込まれる家族収入保険は本当に心強く、気持ちを励ましてくれます。私は病室で、夫にこんな約束をしていました。


   「さやが3歳になるまでは、保育所には預けないで私が自分で育てるね」
生命保険のおかげで、この約束も貫くことができました。いちばん大切な赤ちゃんの時をずっと一緒に過ごせたことは、私とさやにとっての財産です。



   林さんが亡くなった何年か後、奥さまからこんなことを言っていただきました。 「さやが大きくなって、いろいろな事がわかる中学生くらいになったら、なぜソニー生命という会社から保険金が支払われているのか、どんなお父さんで、家族のことをどんなふうに思っていたか、話してあげてくださいね」

〜奥様のお話より〜

   さやは、小学4年生になりました。学校の授業も、そろばん塾も、ミニバスケットクラブも、すべてが楽しくてたまらないようです。料理や洗濯など、お手伝いも少しずつしてくれるようになりました。私も、母親として、1人の大人として、恥ずかしくない姿であり続けたいと思います。

   今でも、休日の外出はできるだけ避けています。家族連れを目にすると寂しくなるからです。それでも、さやがまっすぐ元気に育ってくれているところを見て、私もこの子も、もっともっと幸せになっていけそうだと、前向きな気持ちになるのです。



  林さんが亡くなってから、この5月でちょうど10年になりました。あれから、何人かのお客さまの保険金をお支払いしました。それらの経験は、私に色々なことを教えてくれました。

   林さんがあんなに早く亡くなることを、あのとき、誰が知り得たでしょうか。万一のことは、いつ誰の身に起こるかはわからないのです。だからこそ、私たちライフプランナーは、全ての人たちに、万一の場合について考えていただき、保険の話をしなくてはならないのです。そして、不幸にもその万一が起きてしまった後に、保険金に込められた遺志、ご家族への「想い」「愛」をお伝えすることも、ライフプランナーにしかできません。「愛」と「命」と、それを支える「お金」。この世に、これ以上に大切なものはあるでしょうか?その大切なものすべてに関われる唯一の職業が、ライフプランナーなのです。

   つい先日、数年ぶりにさやちゃんにお会いしました。とてもしっかりした、素敵なお嬢さんに成長していました。もう何年かたって、彼女に、お父さんのことをお話できる日を、私は楽しみにしています。



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